園芸Japan(日本版)より美しく飾りたい春蘭鉢合わせの手本 2024年01期
春蘭鉢は通称「黑楽鉢」に植え るのが基本である。この鉢は江戸 時代を起源に成立したもので、改 めて説明するまでもないが、形は 真ん中あたりがやや絞られた縦 長の円筒形で三つ足でそれを支 え、上部には幅広い鍔が付く。 この鉢の構造は、いけばなで用 いられる薄端(皿型の広口を載せ た瓶型の花器。三つ足のものも多 い)の花器と似ているように思わ れる。いけばなが伝統園芸に与え た影響は明らかではないが、両者 には共通の美意識が働いている ことは否定できないだろう。それ は抽象·理想化された自然の姿 や、何らかの思想を器の中に表現 する点、単に植物だけでなく、器 を含めた全体を観賞の対象とす るという点のふたつである。 伝統園芸の美意識に影響を与 えたものとして'盆栽も無視でき ない。日本の盆栽(盆山)の最も古 い記録は「西行物語絵巻』(作者不 明·13世紀)とされる。そこに描か れているのは、水が張られた長方 形の盆の中に、連山に見立てられ た石が置かれたもの。苔が張られ た石のところどころからは、樹木 の枝らしきものが伸び出してい る。つまり記録された最古の盆栽は、現在言うところの石つき盆栽 だったということになる。 この場合、鉢に該当するのは 石。乙れは植物を育てるための 場、一種の器であると同時に山 を表す作品の一部でもある。この 「器」なくして盆栽は成立しない。 岩が鉢に変わつたとしても、この 関係は変わらない。盆栽とは単な る植物のことではなく、植物と鉢 が一体となって作り出す全体を 表す言葉と言えるだろう。 伝統園芸における美意識は、現 代作家の春蘭鉢や富貴蘭鉢はも ちろん、多肉·塊根植物鉢にまで 引き継がれているようだ。春蕳 鉢·富貴蘭鉢に描かれた文様には 寓意が込められ、植物とともに何 らかの思いが表現されている。多 肉·塊根植物の鉢は、厳しい自然 の風景に見立てられているのか もしれない。 鉢を単なる栽培容器以上の物 と考える文化は尊重したいが、必 ずしも形式にとらわれる必要は ないだろう。春蘭でも、時には黒 楽以外の鉢に植えてみてもよい。 個々の品種、個体に合った鉢を自 身の目で選ぶのだ。その「鉢合わ せ」を考える時間は、何よりも楽 しいひと時になるに違いない。
书 号:4910019430148
尺 码:209×292×5毫米
页 数:106页
重 量:330克
问藏价:146元